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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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ジョカル編というか番外に近いのですが、
古いマシンに残っていたのを救済。

これがラクだったらしばらくブログに更新めいたことをやります。

でないと年内に終わらない。。。

あと、、ヤフーメールのパスワードを思い出せません。

どっかにメモしたと思うんだけど。
また作成してからお知らせいたしますが、とりあえず御用の場合は
メールはウィンドアンドレイン@live.jpへおねがいします。返信しますから。
最初のカタカナを英語でつづってください。風と雨です。

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結局、ジョカルは部下にも熱心に説得されて少しだけ残ることになった。部下たちもオリバーも、担架のライラにつききりの彼を見ていたので、これはどうしても残さねばならないと結託していたのである。
「僕は一足先にピドナに報告してファルスに戻る。それでいいね?」
「リブロフの援軍に遭ったら、よろしく言ってくれるか。無駄足させて申し訳なかった」
「わかってる」
「長くはならない、すぐに追いつくつもりだ」
オリバーは、どこにいても生真面目なジョカルの言葉にふふっと笑った。4名だけ、村の警備に兵士を残し、オリバー隊は砂漠を後にした。
ロサは途中の自分の村に戻り、オリバーに深く礼を述べてから、村の再建を始めると語った。その顔は若くても村のリーダーのそれになっていた。


ジョカルは自分の傷は気にしない様子で、寝かされたライラの傍についていた。部下たちが微笑んで何か言っていたのは知っている。だがジョカルは、自分がもっと上手く戦っていればライラをこれほど傷つけずに済んだだろうと思って、ひとり責任を感じていたのだった。
ライラの目が醒めたのは丸一日経過したころだった。窓からの風が涼しくなり、部屋の片隅にあった、陶器の睡蓮鉢で魚が水音を立てた。
すぐに顔を見せたのは傍仕えの少女ミリアムとニルギニの2人だった。
ライラはすぐに外に出るとミリアムに言ったが、ニルギニはもってきた水差しをわきに置きながら、無理せぬほうがいいとたしなめた。そして足が折れているライラは、少女にもたれるようにして倒れ掛かった。
「言わぬことではありませぬ」ニルギニは笑って助け起こし、ベッドに戻した。「皆には伝えておきますから。もう少しだけお休み下さい」
ライラはぶりかえしてきた痛みに耐えながらベッドにもぐった。ニルギニは、ミリアムに香を焚く支度をいいつけ、懐から出した香草に火をつけた。ふわっと水のような香りが漂う。
「本当に、無理はなさらぬよう。しばらくは誰もこさせませぬ」
「もういいから」ライラはしつこいニルギニが可笑しくなり、寝ながらくすりと笑った。

しばらく静かな時間が流れた。香の薫りは、窓が開いているせいもあってほどよく薄まり、たまに魚が立てる水音が、ここは安全なのだと言っているかのようだった。
一時間たっても、ジョカルはまだやってこなかった。とうとう、入ってきたミリアムにそのことを聞くと、
「出発の支度中だから、それが済んだら挨拶に来られるとのことです」
ライラは慌てて、無償で帰すわけにはいかないから宝石を持ってくるようにと言いつけた。

ジョカルが入ってきたとき、ライラはもうちゃんと起きて椅子にかけていた。ジョカルはアーマーを着た姿しか見ていないので、ライラの変貌に驚いたが、彼はいきなり本題から言い出した。
「負傷が大事に至らなくて何よりだ。住民はかなり心配しているから、早めに姿を見せたほうがいいんじゃないかと、思う。その、――この周辺の警護に兵士が4人で当たっていた。今は、すっかり安全だ。それで、オレたちは引き揚げる、その挨拶に」
ジョカルは言いながら自分で自分の挨拶がなっていないと思い、眉をひそめた。総司令官になるまでに、ジョカルは身分のある連中の前でさんざん挨拶はこなしてきたのだ。それが、あれだけ対話もあったライラ=ジャミルが、小さい部屋ながら、ヤマネコの毛皮を敷いた上のマホガニーの椅子に座り、女王然とした態度で王冠までつけているのを見ると、今急に、異世界に迷いこんだような心細さを感じてしまっていた。
うつむきそうなジョカルにライラは言った。
「ファルス=スタンレー総司令官とその部下の方たちに、ナジュで救われた者たちを代表して御礼を申します。この地のことはもう心配無用につき、ご自由に出発なさってください。ゲッシアのすえとして、礼には些細なものしか差し上げられませぬが……」
ジョカルの前に、ニルギニが美しい小箱を差し出した。手にとらないで見ていると、ニルギニはそれを開いた。
入っていたのは、かつてナジュで採れたという赤いオパールの、数カラットはありそうなペンダントトップである。
ジョカルはさっと目を上げ、ライラに言った。
「我々は、宝石ほしさに味方したのではありません。最初は、行きがかり上だった、それに、目の前で多くの人命も失った。化物に蹂躙される村や、殺される人々をもっと早く助けたかったとは思うが、そこに国家や血統や、褒美で動くような計算はない!」
ジョカルは、ニルギニの差し出す小箱を手で押しのける仕草をし、付け加えた。「……自分たちだって傷だらけなのに、あなたの身体を心配してくれる人々を見ていないのか? あの人たちは、あなたがアクバー峠の谷で戦いを放棄しつつあったとき、孤立無援でこの荒地に残っていた。勝利するという希望に賭けていたんだ。ともに剣を振るうことだけが助けなんじゃない。かれらこそ、その宝石を貰うに値するとオレは思うが」
ライラは彼の反応に言葉を失ったようだった。ジョカルは、ちょっと気まずくなった空気を感じて、「では、ゲッシア女王にアル・アクバルのご加護を」と声高に言った。わずかな間があって、ライラはうなずいて、さようなら、カーソン=グレイ総司令官、と答えただけだった。
ジョカルは一礼して、そのまま出て行った。
ミリアムがやきもきして思わず言った。「ライラ様、呼び戻さなくてよろしいのですか?」
ライラは黙って窓の外を見詰めていた。ジョカルが部下とともに出発する、馬の蹄の音が聞こえる。ライラは、傍に立ったニルギニを、うるんだ瞳でそっと見上げた。
「もう、よろしいのではありませんか?」と、元神官は優しく言った。「あなたは十分過ぎるほどゲッシアの誇りを守ってこられた。それも、母君が王女だったからという理由で。……ですが、少なくともこの集落までついてきた民は、ことあるごとに王が、その位ゆえに自ら単独で犠牲になることを悲しんでおります。センウセルト様の死にしても、宿命と言いきることは私とてできませぬ。ライラ様、私はもっと早くに考えてみるべきでした。母君を洪水から救ったのは、貴族でもなく、ましてや財力や、儀礼でもありません。ただ、そこにいたから救いたいと望んだ、このナジュの、名もなき人々の心です。そんな人々に救われたときから、母君ファティーマ姫様は、すでに王権のくびきから自由になっていたのではございませんか?」

建物の中庭部分はさほど広くはないが奥行きがあり、かつての王朝をしのばせる石畳が続き、ナツメヤシの木が小さなオアシスを囲んでいる。そのオアシスこそ結界石がとれる井戸であり、それゆえに荒地のこんな場所に、ゲッシアを名乗る貴族の一族が、わずかでも領民とともに暮らしていたのだった。
夕刻に近くなって、ライラ=ジャミルは、そこに石の形でしつらえられた細身の玉座に座っていた。傍にはニルギニと、ミリアムが控えていた。
ライラがガーディアンを倒して帰還したことはこの集落の誰もが承知しており、重傷と聞いた彼女が正装で玉座にいる姿を見ようと、多くの住民がこの場に集まった。そしてその姿が「姫」と言われた美貌の母君にそっくりだと小声で言い合った。
集まった者が落ちつくと、ライラは口を開いた。そしてジョカルとオリバーの助けにより、この集落が救われたことを述べ、自分もまた無事であると強調した。中庭には歓声が上がった。ライラは再び口を開くと次のように言った。
「……皆、私は今度の戦いで弟を失った。けれど、家族を失ったのは私だけではない。また、私は恐ろしい化物と戦い、いまだ立てない傷を負った、だが死ぬほどの傷を負ったのは皆も同じだ。それならば、同じ悲しみに耐え、同じように血を流した、皆と私は家族、兄弟姉妹にほかならない。その家族、兄弟同士で、かしづいたり、傷つけあったりするのがナジュにおける王国のありかただとしても、そんな国を血を吐く思いで復活させるべき理由はもはや私には見出せない。
もはや身分も種族も関係なく、ともに助け合い、力を集め、ささやかでも平穏な日々を取り戻すとき。そしてわがゲッシアの誇りもまた、民の中でこそ、倒れてのめりこんだ泥の中から何度でも立ちあがる気概となって受け継がれることを――少なくとも、私は望む。皆は、どうか?」
しんとなっていた。ニルギニは見回し、ゆったりと会釈して手を貸した。ライラ=ジャミルは玉座を降り、王冠を床に置いた。
それは、王権の象徴が大地を通じて民に平等に配されたという証でもあった。皆はただ驚いて、その場にひざまづこうとした、だがそのとき、ライラはバランスを崩して倒れ掛かったのである。さっと、数人が手を差し伸べて彼女を支えた。
「ありがとう」ライラは言い、微笑んで立ちあがった。それだけのことだった。しかし、人々はゆっくりと彼女の周囲に集まり、そしてリラックスした、自由な談笑が始まった。

ゲッシア王朝はこのとき完全に滅亡したと、後の歴史書は記している。ジョカルはこのときの様子を後で知ったが、彼が感じたのは、悲しみや切なさをひっくるめた、どこまでも深い愛情のようなものだった。
ようやく帰ってきた、と彼は思った。彼ははじめて自分の居場所が見えたのである。ナジュ砂漠にも、そしてまた、ファルスにも。
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