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パブ「栄光ある玉座」の主人ミカエルには秘密があった。昼間はパブの主人。夜はロアーヌに来るあくどい商人やちんぴらを一掃するのに怪傑に変装するのである。レイピア系武器の名手であるミカエルは次々と悪党を片付けるだけでなく、仮面こそつけているがそのいでたちが派手で、見事な黒い馬にまたがり、マントの下には紫色に輝くアーマーを着ている。
実は表の顔では、彼は取引先のゴドウィン酒造とひと悶着あって、ようやく商売が軌道に乗ったところだった。
「ミカエルさんはお父さんのあとを継いで色々と大変なんだろうね」
「でも、あんな命令口調でよく接客がつとまるわね」
と、町の人々はちょくちょく彼を話題にした。無論、ミカエルはそういう噂などどこ吹く風である。いずれロアーヌを出て、世界各地にパブのチェーンを出そうと野望を抱いているのだ。
が、昼間は閑古鳥のパブ。従業員はバイトの「影」ひとりでも余っている。
さて、ある日の午後、新聞一面を飾る自分の記事を、ミカエルはパブのカウンターによりかかってニヤニヤしながら読んでいた。
「これを見たか?『月夜に出現したヒーロー;ひったくりに襲われた老婆のポーチを奪還』なかなかいいものだな」
カウンターの後ろからそっくりな声がためらいがちに応じた。
「事件がちっちゃすぎではございませんか? ポーチにはいってたのってハンカチとティッシュだけだったじゃないですか」
「小さな事件を摘み取れば巨悪は防げるものだ。先週のこの記事を見ろ」
と、丁寧にスクラップした記事をつきつける。
「ええと?『謎のヒーロー怪傑ロビン、安物ワインの不正を暴く』」
「おかげでロアーヌのワイナリーの信用が保てたと粗品を持って人が来た」
「それじゃ、正体がバレバレじゃないですか。というか、これは私が解決した件ですよねえ」
「お前が変装時も影をしてくれていることは褒めてやる。だがなぜロビンだ? 私はロビンと名乗った覚えはないぞ」
話をそらされた上に痛いところを突かれ、影はそこでぎくりとした。
怪傑の影までやらされてバイト代は同じは割りに合わない、と考えていた彼は、自分の変装用のアーマーに本物とは違う細工を入れた。それはロアーヌの頭文字を入れたつもりだったのだが、やけくそで作って不注意にも、LとRを間違えていたのだった。
実は表の顔では、彼は取引先のゴドウィン酒造とひと悶着あって、ようやく商売が軌道に乗ったところだった。
「ミカエルさんはお父さんのあとを継いで色々と大変なんだろうね」
「でも、あんな命令口調でよく接客がつとまるわね」
と、町の人々はちょくちょく彼を話題にした。無論、ミカエルはそういう噂などどこ吹く風である。いずれロアーヌを出て、世界各地にパブのチェーンを出そうと野望を抱いているのだ。
が、昼間は閑古鳥のパブ。従業員はバイトの「影」ひとりでも余っている。
さて、ある日の午後、新聞一面を飾る自分の記事を、ミカエルはパブのカウンターによりかかってニヤニヤしながら読んでいた。
「これを見たか?『月夜に出現したヒーロー;ひったくりに襲われた老婆のポーチを奪還』なかなかいいものだな」
カウンターの後ろからそっくりな声がためらいがちに応じた。
「事件がちっちゃすぎではございませんか? ポーチにはいってたのってハンカチとティッシュだけだったじゃないですか」
「小さな事件を摘み取れば巨悪は防げるものだ。先週のこの記事を見ろ」
と、丁寧にスクラップした記事をつきつける。
「ええと?『謎のヒーロー怪傑ロビン、安物ワインの不正を暴く』」
「おかげでロアーヌのワイナリーの信用が保てたと粗品を持って人が来た」
「それじゃ、正体がバレバレじゃないですか。というか、これは私が解決した件ですよねえ」
「お前が変装時も影をしてくれていることは褒めてやる。だがなぜロビンだ? 私はロビンと名乗った覚えはないぞ」
話をそらされた上に痛いところを突かれ、影はそこでぎくりとした。
怪傑の影までやらされてバイト代は同じは割りに合わない、と考えていた彼は、自分の変装用のアーマーに本物とは違う細工を入れた。それはロアーヌの頭文字を入れたつもりだったのだが、やけくそで作って不注意にも、LとRを間違えていたのだった。
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