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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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*今日は長めです。

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コッティはもらった術の本に夢中だった。サヴァは、ジャングルから解放されて、マストにある見張り台にさっさと上った。甲板に椅子を出して、まだ本を見ているコッティにしびれを切らし、サヴァは声をかけた。
「上ってこない?」
コッティはまぶしそうに手をかざしてサヴァを見上げた。
「海しか見えないんじゃない? もうまる一日風が吹いてないしぃ」
「だから揺れないのよ。揺れたら酔うかもしれないわ。今ならきっと平気よ」
コッティは、それなら、と本をきちんと椅子においてからマストに近寄り、縄梯子になっている部分を少しのぼってみた。
思いのほか高い。そしてサヴァは、そこからもっと、ずっと高いところで気持ちよさそうに遠くを眺めている。あんなところが好きなんて、絶対変わっている、とつぶやきながら、それでもコッティはどうにか見張り台に到着した。もちろん、下は極力見ないようにした。のぼってしまえばそれも平気だった。
「ここは一番低いところよ、大丈夫、落ちやしないから」
サヴァは手を貸してコッティを引っ張りあげた。

コッティは、見張り台から海を眺めた。素人にもわかる完全な凪。水平線のどこにも雲がなく、水面はのっぺりとして、跳ねる魚の姿も、活発な海鳥の影も見当たらない。こんな状態がつづけばこの船とて干上がってしまうはずだが、乗組員は、仕事が減ってつかの間の休みという具合で過ごしている。
コッティがまず気がついたのは、操舵係らしいフローレンスが、なぜかワイン樽を転がしていることだ。色白で太めの彼はそんな仕事がいやに似合う。
「フローレンスは昔、シェフだったの。船に乗って長いはずだけどいまだに海賊って感じじゃないわ」
「シェフがどうして海賊に? 高級ワインを盗んで逃げたりなんかしたの?」
「それがね、ファルコの話だと、ヤーマスのパブでからまれているフローレンスをマリノが助けてしまってね」
フローレンスはただ、カニの塩味が利きすぎるとクレームをつけられ、そこで謝ればすむのを、頑固に、この種類のカニは塩をきかせておかないと毒素が抜けないとかなんとか言い返してしまった。カニをとなりのテーブルで食べていたマリノは、美味なのになぜそこまで文句を言うのかと、仲裁というより喧嘩を売る形で割って入り、不用意に自分が海賊だと口をすべらせ、口論になった相手が役人を呼ぶだのなんだのと大騒ぎになった。
「それでフローレンスも一味と誤解されついでに、船に連れてこられたらしいの」
「それは、とんだ災難だったのね…」
でもシーフードの新鮮さが病みつきになり、船を下りないフローレンスであった。

それから甲板でタオルを干しているアルベロに目が向く。アルベロは気難しそうな、結構な年齢の医者で、サヴァは子供のときからこの人がかかりつけだ。
「これはマリノの話なんだけど」とサヴァはまた説明する。「アルベロはピドナの人で、元は貴族だったそうなの。医者として優秀だったから、ピドナ王宮で仕事をしていたらしいわ」
ところが、ピドナの変で主が変わってしまった。アルベロは、クラウディウス家の生き残りの居場所を問いただされた。貴族だからさほどむごい目にはあわなかったが、ルートヴィッヒが何をしたかは承知していた。そこで彼は、モンスターの巣窟になっている場所をいかにも隠れ家らしく教えて、そのまま逃亡した。
「どうしてそんな場所を知ってたのかしら?」
コッティの疑問にサヴァは楽しそうに答えた。
「そのモンスターはゼラチナマスターの一種で、ヒゲからよい薬が取れたのですって。アルベロはどうやら、こっそりと巣窟にいっては、ゼラチナマスターが寝ている間にヒゲだけ失敬してたらしいわ」
逃亡するときに、アルベロは収集したヒゲはちゃんと持って出た。おかげで船で薬が切れたことはないのだった。

「おーい、ファルコー♪ マリノでもいいやぁ」
下の倉庫から飛んで出てきたのは猿のジャーヴィこと、赤毛のジャーヴィスだった。
「どうしたの、ジャーヴィ? ファルコなら船室にいると思うけど」
サヴァに言われて、彼は見張り台を眺めた。
「2人ともそこかあ。この凪じゃあ退屈だろ、いいもの見せてやるよぅ」
「コッティ、降りましょうっ」
サヴァはすぐさまするするとマストを伝って降りた。コッティはそうはいかないので、ジャーヴィとサヴァに手伝わせて、最後は帆布にダイブしなければならなかった。
「ねえ、何、いいものって?」
「こっちだ」ジャーヴィは得意そうに下の倉庫へと案内した。
わざわざ連れて行ったのは、そこで占っていた結果をそのままの状態で見せたいがためだったらしい。カードはゲッシア王朝の頃からの伝統的な絵柄占いだ。
母方がナジュ草原地帯の出身だという彼は、神王教団に両親が捕まり拷問の末獄死したと聞かされ、権力というものすべてを拒否して海賊になった。カード使いという、エキゾチックな習慣を捨てていないのも自らの出自を忘れないため。といっても、カード占いは今では次の港で何をして過ごすかのヒントを探るためのお遊びになっている。ただ、たまに大いなる目的にかかわる結果が出たりするのだ。

「このカードを見ろよ。いい兆候だ、3人目が見つかると出てる」
「へえ」サヴァはうれしそうだった。
「3人目って?」コッティはジャーヴィのほうを覗き込んでいった。
「伝説のメッサーナ海軍、通称ブルーマリーンの生き残り、3人目だ。ファルコはずっと、ちりじりになったブルーマリーンを探しているのさ。そして―」
ジャーヴィの後ろから別の声がした。
「そして、メッサーナの主のもとへ返そうとしてるのさ」
マリノは誇らしげに言って、腰に手を当てた。
「3人目は風も運んできてくれるといいがな。それも占え、ジャーヴィ」
「おしっ」
ジャーヴィは手際よくカードを開いた。
パラリ。まずは破壊された戦車が出た。戦闘で苦戦する兆し。
パラリ。2枚目は、美しいバラ。女が現れる兆し。
ジャーヴィはちょっと顔をしかめた。
パラリ。3枚目は、猿の道化師、逆さのカード。

ジャーヴィスは青ざめて、残りのカードを取り落とした。
「それ、どうしたの?」思わずサヴァが聞く。
「なんでもないよ?」彼は微笑んで見せた。「さて、ファルコにいい知らせを届けてこよう」
「うむ、オレもヤツの驚く顔を見てやろう」と、マリノも階段へと向かう。

じゃね、と、席を立って出て行くジャーヴィを2人で見送ったとき、コッティは小声で言った。
「あのね、あのカード、私、見たことがあるの、モウゼスの道具屋でレプリカを売っているの。それでね」
「意味が読めるのね、コッティ?」サヴァは期待して尋ねた。
コッティは、急いで緊張したようにうなずき、息を吸い込んでから言った。
「戦闘が先に出てきたら、猿の道化師はカードの占い者、逆さは死。あれは、さっきの彼、ジャーヴィスがまもなく戦いで死ぬという意味なのよ、サヴァ」
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