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「なにか、嫌なにおいがしますね」と、思わずフェリックスは言った。
だが、さっきまで側にいて話をしていたハリードの姿がない。すぐにまた顔を出しそうな気がして茂みを見つめるが、ちっとも出てこない。そして一方で、生ごみのような悪臭が確実に近づいていた。
背後ではパス一族が騒いでいる声がする。ハリードは何も指示しないのだろうか?
フェリックスは危険を感じて剣を抜いた。足場はコケがびっしりと生えて滑りやすい。それでなくても、急いでここまで歩いてきたブーツには、途中で草がからまりこびりついていた。
不利だ。どうにか、ここから別の場所へおびき出せるだろうか。
悪臭はさらに近づく。だが、足音や気配が薄いのはなぜだ?
それに、ハリードは?
一瞬、彼は油断したらしい。目の前に巨大な黄色い物体が出現した。
無意識に剣で斬り払ったが、そのまま手ごたえもなく、巨大なゴールデンバウムに押しのけられるように倒された。鈍い、石に当たる音がした。剣が手から落ちたのだ。
悪臭がよりきつくなって、息が詰まりそうだった。フェリックスは夢中で剣を拾い、最初の攻撃を身をひるがえしてかわした。
ふと見ると、パスの一族が背後で攻撃準備をしている。
草や粘土でか!
フェリックスは背後に向かって怒鳴った。
「さがってろ、君たちの手に負える相手ではないぞ!」
ゴールデンバウムと見えたのはその外見だけだった。動きはすばやく、まるでグリフォンか、昆虫系のようだ。その動きで毒液を吐きかけてくるのではたまらない。
フェリックスは攻撃をかわしながら、敵の弱点を探り続け、それが腹部であることに気がついた。彼が攻撃するたびに、ゴールデンバウムは腹部らしき部分をかばうからだ。
「ひっくり返してやる」フェリックスはつぶやいた。
そして、その声に応じるように、聞きなれた声がすぐ近くで響いた。
「よい作戦だ、フェリックス」
ズィールだった。すでに術を撃つ構えをしている。その隣にティベリウスもいた。
瞬時に現れたところを見ると、例の瞬間移動を使ったのだろうが、それを気にする余裕はない。
「風を起こすぞ、しっかりと狙いなさい」
はいっ、と返事をして、フェリックスは狙いをつけた。
風が起き、フェリックス以外の場所をすさまじい勢いで吹きぬけた。
フェリックスは剣を逆手に構えて、バランスを崩しつつあるゴールデンバウムに大剣技をかける。「乱れ――」
毒液を封じられた軟体動物は、フェリックスの光速の動きに応じることができない。そしてティベリウスは、この敵の体をほぼ作っている体内の水分に術を通した。
ついに腹部が見えた。それは決して腹ではなかった、心臓のようなものが無防備に脈打っている。フェリックスは吹き上がる草と石粒の間でターゲットをとらえた。
「――雪月花!!」
ゴールデンバウムの体内で明らかな破壊が起こった。
それは電気を発し、うねうねとのたうちながら、脱皮するような動きをはじめた。
「まだ、死んでいない」と、ズィールが予期したような落ち着きで言った。
フェリックスは汗をぬぐう。
「すぐとどめを刺さないと」
《そうはサセナイ》
脱皮を終えた敵は、ゴールデンバウムとは似てもにつかない、上半身が女で、下半身が蛇の、明らかにレベルの高いモンスターだった。
《気の毒なヴィマータを葬ったろう、貴様タチ? おかげでこの私が解放された。しかも、下位のモンスターの皮まで破ってくれて、感謝するよ》
その声は最初はくぐもって低かったが、「感謝するよ」のあたりでは、甲高い、人間の女性のような声になっていた。
「ガーディアンじゃ、フェリックス」ティベリウスが言った。
「ヴィマータの存在が、このガーディアンを封じていたのだ」
「ただならぬ邪気を感じて、我々はここにとんできたのだよ。君は船に乗っていたとばかり思ったんだが」
「その話は長くなるからあとでね」と、フェリックスは答え、ゴールデンバウムよりはるかに強敵なこの蛇女をどう倒すか、すばやく考えをめぐらせた。
彼女は、(フェリックスは、女性らしき姿のこのモンスターをなぜかアレなどとと呼ぶことはしない)細身の剣を両手にしのばせている。と見れば、不規則な動きでこれを突き出してきた。フェリックスは剣でかわし、ツタを鞭のように使ってかわし、さっと接近した。だが、彼が剣をふるうより速く、目の前に青黒いものが見えた。
――舌!?
ビシッ!
フェリックスは顔をひどく打たれてとびさがった。気がつくのが一瞬でも遅れれば目をやられていたところだ。顔をやられてもかなりダメージがあった。火傷傷くらいはついただろう。ガーディアンは、ここぞとばかりにフェリックスに追い討ちをかけた。剣で応じる切っ先が火花を散らし、何度もつき転ばされた。立ち上がっても尾で足払いをかけてくる。
それでも彼は、術の詠唱が終わるまで時間を稼ぐつもりだった。
空気中の水分を凝縮して、2人が何かしかけようとしている。
今にも倒れてしまいそうなフェリックスを見て、ガーディアンはとどめをさしに来た。
――かかったな?
フェリックスはひらりと宙へ跳んだ。
ガーディアンは意表をつかれ、無防備にも体を伸ばして彼を捉えようとした。
「「カカロッカ!!!」」
水柱が2本、強烈に巻き上げながらガーディアンを直撃した。
「これくらいでは死なないだろうね?」ズィールが付け足してにやりとする。
そして次を放った。
ゴゴオオオオオッ!
カカロッカは2本から4本と増え、36本まで立ち上った。
ガーディアンはなすすべもなく、水に巻き取られ、ついに岩に叩きつけられた。
やっと、という感じで2人の術士は手を下ろす。
フェリックスはとんでいき、剣をガーディアンの首に向けた。
《とどめを……》
ガーディアンは、静かな低いトーンでささやいた。もちろん、もう戦う体力はないのだろう。フェリックスはその顔が、モンスターというにはあまりにも美しいので、一瞬、ひるんだ。このモンスターはそれほど悪いことをしただろうか?という思いも頭をよぎった。
「フェリックス!」
ティベリウスの声に彼はわれにかえる。
そのときには、ガーディアンの強力な尾に、足からしめあげられつつあった。
「うわっ」
フェリックスは引きずり倒され、思わず声をあげる。ガーディアンは、立ち上がって、再び甲高い声で笑った。
「やはりのう」
「ユリアン・ノールの遺伝子です」
「今度はさっきより難しいぞ」
「彼の足が折られる前に、ですね」
だがそのとき、森のほうから空気を裂く音が発せられた。それも多数!
2人の術士はそれらをさっとかわそうとし、かわす必要がないことをすぐに悟って、ターゲットがどうなるのかを注視した。
驚いたのはフェリックスだ。なぜならそのすさまじい矢の雨には見覚えがあった。
ガーディアンもまた予想しない攻撃に目をみはり、あわてて体をよじった。フェリックスはここで逃れ、地面に転がって矢の雨を避けることができた。
それは、パスの一族の、あの草の矢だった。
フェリックスにはへなへなしたただの草だったものだ。それが、ガーディアンに向かうなり、小型ながら鋭い切っ先をもった緑色の矢と化し、剣にも術にも倒れなかった体に容赦なく突き刺さった。
ガーディアンは苦悶の声を上げ、その場でのたうつ。しかも、パス一族の攻撃はまだ続いた。粘土の岩攻撃である。ガーディアンがいる場所に際限なく降り積もり、そしてそのまま、ガーディアンごと大岩と化した。背後で、どうやら戦勝の叫びらしい、にぎやかな声があがった。
「封印されたようじゃ」と、ティベリウスが言った。
「パスの一族です。ただの草や粘土の武器だと思っていたのに」と、フェリックスは剣をしまいながら言う。
「よく知っているね、伝説の一族のことを」
「ハリードさんが、さっきまでそこにいて、話してくれたんだ」
フェリックスはこれで事情を話しやすくなったと思った。だが2人はけげんな顔を見合わせている。フェリックスは言い足した。
「ハリード・エル・ヌールです。ジャングルに住み着いているので、会ったことがあるのでは?」
「フェリックス、それは――」ズィールが言いにくそうに、彼の肩をつかんだ。「15年も前のことなんだ。彼はたしかに宝石を捜してジャングルに来た。だけど、行方不明になったんだよ」
「え?でもオレはさっき……」
「崖から落ちて、そのまま亡くなったという者もいる。足を折って谷にでも落ちたら最後、密林の草に覆われて発見されることはないからな。だが、彼が不思議な空間を通って、別世界でパスの一族と知り合いになり、その世界へ行ったきりになったという話もある。死体を見たものはいない。……行方がわからなくなって、15年じゃ」
フェリックスは黙り込んだ。
たしかに後姿を追ってここまで来て、パスの一族と話すハリードに会った。だが、その姿は50歳のものではなかった。それにしても、フェリックスはそこにいたハリードと話をしたつもりだった。その場所にガーディアンが出現したのであり、また、パスの一族は実在する。
ジョカルには何と言おう?
そう思ったとき、はっきりと声がよみがえった。フェリックスは決心した。見たままとありのままを伝えよう。ジョカルは勇者の息子だ、真相は、きっと自分でつきとめる。
妹のアンゼリカが力説するように、この世界には伝説という形で、不思議な出来事の断片が残されている。姿が消えようが、死んだとうわさが立とうが、フェリックスは聞いた言葉を信じていた。
――エル・ヌールはくたばっていない、と。
だが、さっきまで側にいて話をしていたハリードの姿がない。すぐにまた顔を出しそうな気がして茂みを見つめるが、ちっとも出てこない。そして一方で、生ごみのような悪臭が確実に近づいていた。
背後ではパス一族が騒いでいる声がする。ハリードは何も指示しないのだろうか?
フェリックスは危険を感じて剣を抜いた。足場はコケがびっしりと生えて滑りやすい。それでなくても、急いでここまで歩いてきたブーツには、途中で草がからまりこびりついていた。
不利だ。どうにか、ここから別の場所へおびき出せるだろうか。
悪臭はさらに近づく。だが、足音や気配が薄いのはなぜだ?
それに、ハリードは?
一瞬、彼は油断したらしい。目の前に巨大な黄色い物体が出現した。
無意識に剣で斬り払ったが、そのまま手ごたえもなく、巨大なゴールデンバウムに押しのけられるように倒された。鈍い、石に当たる音がした。剣が手から落ちたのだ。
悪臭がよりきつくなって、息が詰まりそうだった。フェリックスは夢中で剣を拾い、最初の攻撃を身をひるがえしてかわした。
ふと見ると、パスの一族が背後で攻撃準備をしている。
草や粘土でか!
フェリックスは背後に向かって怒鳴った。
「さがってろ、君たちの手に負える相手ではないぞ!」
ゴールデンバウムと見えたのはその外見だけだった。動きはすばやく、まるでグリフォンか、昆虫系のようだ。その動きで毒液を吐きかけてくるのではたまらない。
フェリックスは攻撃をかわしながら、敵の弱点を探り続け、それが腹部であることに気がついた。彼が攻撃するたびに、ゴールデンバウムは腹部らしき部分をかばうからだ。
「ひっくり返してやる」フェリックスはつぶやいた。
そして、その声に応じるように、聞きなれた声がすぐ近くで響いた。
「よい作戦だ、フェリックス」
ズィールだった。すでに術を撃つ構えをしている。その隣にティベリウスもいた。
瞬時に現れたところを見ると、例の瞬間移動を使ったのだろうが、それを気にする余裕はない。
「風を起こすぞ、しっかりと狙いなさい」
はいっ、と返事をして、フェリックスは狙いをつけた。
風が起き、フェリックス以外の場所をすさまじい勢いで吹きぬけた。
フェリックスは剣を逆手に構えて、バランスを崩しつつあるゴールデンバウムに大剣技をかける。「乱れ――」
毒液を封じられた軟体動物は、フェリックスの光速の動きに応じることができない。そしてティベリウスは、この敵の体をほぼ作っている体内の水分に術を通した。
ついに腹部が見えた。それは決して腹ではなかった、心臓のようなものが無防備に脈打っている。フェリックスは吹き上がる草と石粒の間でターゲットをとらえた。
「――雪月花!!」
ゴールデンバウムの体内で明らかな破壊が起こった。
それは電気を発し、うねうねとのたうちながら、脱皮するような動きをはじめた。
「まだ、死んでいない」と、ズィールが予期したような落ち着きで言った。
フェリックスは汗をぬぐう。
「すぐとどめを刺さないと」
《そうはサセナイ》
脱皮を終えた敵は、ゴールデンバウムとは似てもにつかない、上半身が女で、下半身が蛇の、明らかにレベルの高いモンスターだった。
《気の毒なヴィマータを葬ったろう、貴様タチ? おかげでこの私が解放された。しかも、下位のモンスターの皮まで破ってくれて、感謝するよ》
その声は最初はくぐもって低かったが、「感謝するよ」のあたりでは、甲高い、人間の女性のような声になっていた。
「ガーディアンじゃ、フェリックス」ティベリウスが言った。
「ヴィマータの存在が、このガーディアンを封じていたのだ」
「ただならぬ邪気を感じて、我々はここにとんできたのだよ。君は船に乗っていたとばかり思ったんだが」
「その話は長くなるからあとでね」と、フェリックスは答え、ゴールデンバウムよりはるかに強敵なこの蛇女をどう倒すか、すばやく考えをめぐらせた。
彼女は、(フェリックスは、女性らしき姿のこのモンスターをなぜかアレなどとと呼ぶことはしない)細身の剣を両手にしのばせている。と見れば、不規則な動きでこれを突き出してきた。フェリックスは剣でかわし、ツタを鞭のように使ってかわし、さっと接近した。だが、彼が剣をふるうより速く、目の前に青黒いものが見えた。
――舌!?
ビシッ!
フェリックスは顔をひどく打たれてとびさがった。気がつくのが一瞬でも遅れれば目をやられていたところだ。顔をやられてもかなりダメージがあった。火傷傷くらいはついただろう。ガーディアンは、ここぞとばかりにフェリックスに追い討ちをかけた。剣で応じる切っ先が火花を散らし、何度もつき転ばされた。立ち上がっても尾で足払いをかけてくる。
それでも彼は、術の詠唱が終わるまで時間を稼ぐつもりだった。
空気中の水分を凝縮して、2人が何かしかけようとしている。
今にも倒れてしまいそうなフェリックスを見て、ガーディアンはとどめをさしに来た。
――かかったな?
フェリックスはひらりと宙へ跳んだ。
ガーディアンは意表をつかれ、無防備にも体を伸ばして彼を捉えようとした。
「「カカロッカ!!!」」
水柱が2本、強烈に巻き上げながらガーディアンを直撃した。
「これくらいでは死なないだろうね?」ズィールが付け足してにやりとする。
そして次を放った。
ゴゴオオオオオッ!
カカロッカは2本から4本と増え、36本まで立ち上った。
ガーディアンはなすすべもなく、水に巻き取られ、ついに岩に叩きつけられた。
やっと、という感じで2人の術士は手を下ろす。
フェリックスはとんでいき、剣をガーディアンの首に向けた。
《とどめを……》
ガーディアンは、静かな低いトーンでささやいた。もちろん、もう戦う体力はないのだろう。フェリックスはその顔が、モンスターというにはあまりにも美しいので、一瞬、ひるんだ。このモンスターはそれほど悪いことをしただろうか?という思いも頭をよぎった。
「フェリックス!」
ティベリウスの声に彼はわれにかえる。
そのときには、ガーディアンの強力な尾に、足からしめあげられつつあった。
「うわっ」
フェリックスは引きずり倒され、思わず声をあげる。ガーディアンは、立ち上がって、再び甲高い声で笑った。
「やはりのう」
「ユリアン・ノールの遺伝子です」
「今度はさっきより難しいぞ」
「彼の足が折られる前に、ですね」
だがそのとき、森のほうから空気を裂く音が発せられた。それも多数!
2人の術士はそれらをさっとかわそうとし、かわす必要がないことをすぐに悟って、ターゲットがどうなるのかを注視した。
驚いたのはフェリックスだ。なぜならそのすさまじい矢の雨には見覚えがあった。
ガーディアンもまた予想しない攻撃に目をみはり、あわてて体をよじった。フェリックスはここで逃れ、地面に転がって矢の雨を避けることができた。
それは、パスの一族の、あの草の矢だった。
フェリックスにはへなへなしたただの草だったものだ。それが、ガーディアンに向かうなり、小型ながら鋭い切っ先をもった緑色の矢と化し、剣にも術にも倒れなかった体に容赦なく突き刺さった。
ガーディアンは苦悶の声を上げ、その場でのたうつ。しかも、パス一族の攻撃はまだ続いた。粘土の岩攻撃である。ガーディアンがいる場所に際限なく降り積もり、そしてそのまま、ガーディアンごと大岩と化した。背後で、どうやら戦勝の叫びらしい、にぎやかな声があがった。
「封印されたようじゃ」と、ティベリウスが言った。
「パスの一族です。ただの草や粘土の武器だと思っていたのに」と、フェリックスは剣をしまいながら言う。
「よく知っているね、伝説の一族のことを」
「ハリードさんが、さっきまでそこにいて、話してくれたんだ」
フェリックスはこれで事情を話しやすくなったと思った。だが2人はけげんな顔を見合わせている。フェリックスは言い足した。
「ハリード・エル・ヌールです。ジャングルに住み着いているので、会ったことがあるのでは?」
「フェリックス、それは――」ズィールが言いにくそうに、彼の肩をつかんだ。「15年も前のことなんだ。彼はたしかに宝石を捜してジャングルに来た。だけど、行方不明になったんだよ」
「え?でもオレはさっき……」
「崖から落ちて、そのまま亡くなったという者もいる。足を折って谷にでも落ちたら最後、密林の草に覆われて発見されることはないからな。だが、彼が不思議な空間を通って、別世界でパスの一族と知り合いになり、その世界へ行ったきりになったという話もある。死体を見たものはいない。……行方がわからなくなって、15年じゃ」
フェリックスは黙り込んだ。
たしかに後姿を追ってここまで来て、パスの一族と話すハリードに会った。だが、その姿は50歳のものではなかった。それにしても、フェリックスはそこにいたハリードと話をしたつもりだった。その場所にガーディアンが出現したのであり、また、パスの一族は実在する。
ジョカルには何と言おう?
そう思ったとき、はっきりと声がよみがえった。フェリックスは決心した。見たままとありのままを伝えよう。ジョカルは勇者の息子だ、真相は、きっと自分でつきとめる。
妹のアンゼリカが力説するように、この世界には伝説という形で、不思議な出来事の断片が残されている。姿が消えようが、死んだとうわさが立とうが、フェリックスは聞いた言葉を信じていた。
――エル・ヌールはくたばっていない、と。
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