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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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パスの一族は、カカオの実をあがめていそう。
でもとりあえず、ハリードを用心棒にしているところは、やりかたとして間違ってないようです。

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フェリックスは急いであとをつけたが、つけられる相手は大柄で、道を心得ているために足が速かった。フェリックスは町はずれまでに声をかけることもできず、相手がジャングルに踏み入れるのを見た。
「ハリードさん」
フェリックスは声をかけたが、町の騒音のせいで聞こえないらしい。フェリックスは首を振りながら、またもうっそうとした密林に入るために心の準備をした。

入ってまもなく、町の音は消え、かわりに鳥の声とジーッというような虫の声が響いた。石畳があるかと思えばすぐに途切れ途切れになり、コケがびっしりとはえて石畳なのか天然の岩なのか区別がつかなくなり、ついには巨大な木の根が行く手にのたうつところに出た。
その根の上に、なぜか黒猫がねそべってこちらを見ている。
「こんなところにいると危ないぞ」フェリックスは猫に言ってから、根を飛び越えた。
ハリードらしき人影は、ちょうど次のしげみを曲がるところだ。フェリックスはまた急いでついていった。
そして自分も曲がったときである。
ピシピシッ。
フェリックスはひらりとかわした。
足元に緑色の矢じりが落ちている。毒がぬられていないか注意しつつ拾うと、やじりなのにへなへなと曲がった。ただの草のようにも見える。そこへ、背後から猫がのんびりと鳴いた。フェリックスが顔を上げると、頭上から岩が降ってくる。
ボタボタッ。
すばやくかわして見てみると、その岩はすぐにくずれた。どうやら粘土の塊らしい。
まさか、ハリードがそんな馬鹿なトラップをしかけたりはしないだろうが。
フェリックスはまたしても首を振りながら、先へと進む。気配はすぐ近くにある。フェリックスは、抜け目なく道しるべをつくりながら密林を奥へと進んだ。
こんな馬鹿なことをするハリードが、あの尊敬するエル・ヌールだと知ったら、ジョカルはどう思うだろうか。いやそれ以前に、フェリックス自身もハリードを少なからず尊敬しているのだ。

サクッ。
しんとなった森の奥で、足元がまた別の感じになった。ぐねぐねと曲がった木々の間に、小さな小屋が見える。その向こうに何か人の気配がする。フェリックスは首筋の汗をぬぐい、慎重に腰の剣のありかをたしかめた。

「客人だ。丁寧に扱え」誰かが命じた。
奥で、高いトーンでカラカラと喋る声がする。どうやら文句を言っているようだ。
「言うとおりにしないと、お前たちのほうが踏み潰されるぜ」
文句はだいぶ減った。
「ハリードさん? 私は、フェリックス・ノールです」
フェリックスはよく通る声で言った。
しばらく間があって。
「ああ、よくこんなところまで来たな。男爵の子息が何か用か?」
ハリードは逆側のしげみから姿を現した。
「ええ、あなたに」
言いながら、フェリックスは顔を確認する。
かなりの大柄な戦士という体格、ナジュ人特有の肌色に、長くして束ねた髪。年齢は50すぎのはずだが、15歳は若く見える。腰にはダガーと、吹き矢のような武器を下げていて、右手に両手斧を握っていた。ジャングルの戦士として十分に通用する見た目だ。
「アケ近くの村人がテント社の者に連れ去られた件をご存知ですか。私は、仲間とともにそれを解決しに来たのです。かつてのゲートにも異変がありました」
「町がにぎやかだったのは、村人救済の祝いだったようだな」
ハリードは腕組みをして立ったままうなずく。そしてそろそろと姿をあらわした小さな住人たちに手で出てくるよう合図した。
驚いたことに、かれらはアケの住人をそのままミニチュアにしたような原住民だった。矢の雨やはりぼれの岩はこの連中の仕業だ。
「パスの一族だ。自称、竜殺しの一族。大昔に、このあたりを星の民の末裔が通って南へ移動した、とかれらは信じている。そのときに、世界の終焉の日には太陽が消えると教わったのだそうだ。太陽を、一匹の悪竜が喰らうと。やつら、草と粘土で迎撃すると言い張るから、居候ついでに警護している」
「なるほど」フェリックスは、ふと気がついて剣から手を離した。「世界の終焉は近いかも知れない。けれど、あなたが出奔してここに住んでいる理由のほうが、私は知りたいのですが」
ハリードはふっと笑った。
「たしかに、ユリアンの息子だよな。おせっかいなヤツ」
「そうですとも」フェリックスは黙らなかった。「ジョカルは親友です。あなたを町で見かけたのに、そのまま出発することは僕にはできない」
ハリードはしばらく迷っていたが、しゃがみこんでフェリックスに語ってきかせた。
ジョカルが生まれたときのこと、ハリードはゲッシアの伝統に近いことをしたくて、苦労して占い師を見つけ出し、息子の未来を尋ねた。すると、ジョカルは世界の危機を救う戦いに赴き、大切な剣を折られて殺されると出た。食い止めるには、光という名を持つものが、赤い奇跡の石を手に入れること。ジャングルではヴィマータの炎と呼ばれる巨大なルビーが出るといううわさがあった--

フェリックスはその先まで聞き終え、静かに言った。
「それを信じて、ずっとここに?」
「そうだ。息子を失うよりは、遠くにいるほうがマシだ。ゲッシアの民は迷信深いかな?」
皮肉ではなくて、フェリックスの口調を返した。フェリックスは否定の意味で首を振った。

「ジョカルに、何か伝言がありますか」
ハリードはあっさりと言った。
「エル・ヌールはくたばっていない、と」
父親は、とはいいづらかったらしい。そして、悲しみと懐かしさをこらえたように、ちょっとした照れ笑いを浮かべた。
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