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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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ジョカルの一騎打ち。ギャラリーの従兄弟がハラハラ。

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オリバーが下を覗くと、にらみ合うジョカルとサンティの姿が、薄暗い船室に浮かび上がった。弓で狙おうにも、障害物が多すぎ、その影のせいで暗くて狙えない。モスは、2人の気迫だけで圧倒されてしまって、何もできずに座り込んでいる。自分で灯りを持ってくるか。だがそれには、この狭い通路をずっと奥まで戻らなければならない。狙いさえつけることができたら!
オリバーはもどかしさにイライラした。

ジョカルは、サンティが再度仕掛けてくるのを待ち構えていた。長い鎌は並みの使い手ではすぐに隙を生じるが、サンティはこの長い柄を全く邪魔にしていない。そして、ジョカルが試合で対戦してきたどんな相手もしなかった、異様な構えを見せて、まるで虫を狙う毒蜘蛛のような動きで重心を落とし、鎌をゆっくりとゆすって見せた。ジョカルは暗がりに目が慣れて、鎌の動きをやすやすと追う。と同時に、この空間にある障害物の位置を素早く把握した。
頭上には点灯したランプがあって、浸水している水にちらちらと反射している。また奥の階段脇には、未使用の碇が、その反対側には上に運べなかった食料の樽がいくつかあった。
サンティはいきなり飛び掛ってきた。ジョカルは目の前を切っ先が横切るのを見、髪が少し切れて散るのを見た。そしてかわしながらカウンターで敵の足を狙って跳んだ。
サクッ。
サンティのブーツが斬れる。サンティはこれを気にすることなく、次の攻撃を仕掛けた。ジョカルはダガーと剣の両方で鎌を受け、跳ね返す。返した動きのまま、背後に滑り込み、利き腕の肩にダガーを突き立てた。
フン、とサンティは鼻で笑い、ダガーを抜いて投げ捨てる。次の鎌、来い。ジョカルは、じりじりと動きながら待ち受けた。剣は低く、正面に構えている。
来た。
ダガーで刺された怒りで、サンティの鎌はさっきより速くなっていたが、それより速く、ジョカルの剣がサンティのわき腹を裂いた。ジョカルは手ごたえとともに相手の体を駆け抜けたが、相手が倒れないのもすぐに感じ取った。
「まだ倒れないぞ、ジョカル!」
オリバーの叫ぶ声が聞こえたとき、ジョカルは小声で呟いた。
「そうだろうとも」
サンティが反撃してくるタイミングを狙って、ジョカルは樽を蹴倒した。わき腹を切られてバランスの悪かったサンティはどっと転ぶ。だが、その体勢は彼の得意な構えを可能にしていた。ジョカルに鎌を踏まれても、サンティは同じ体勢でジョカルを睨んでいる。
「武器を捨てろ、貴様は捕虜だ」
と、ジョカルは厳しく言った。
「わかった」
サンティが小声で答えるのを聞いて、ジョカルは、彼の首に剣を突きつけるのをやめた。

ダメだ、と、オリバーは呟いた。サンティの目が黄色かったのは、ある種の薬物中毒のせいだと、彼にはわかっていた。この薬物で洗脳されると、自分の身の保全を考える常識などは失い、とにかく目の前の敵に打ちかかっていくのである。こんな状態で理を説いて通じるわけがないのだ。

これではジョカルが無防備になる。オリバーはその場にある障害物を再度見据え、自分の頭上にある丈夫なロープや、入り口にある華奢なハシゴ、そして、ランプや、碇を見渡した。そして頭の中で計算し、結論が出ると、モスをどかせて素早く弓を構えた。
それは、サンティが、ダガーを拾ってジョカルに飛び掛る寸前だった。
オリバーの放った矢は、ロープを落とし、そのロープの重さでハシゴが倒れ、ハシゴはランプを大きく揺らし、灯りの位置がずれた。
「見えた」
渾身の第2矢はサンティの右足を床に縫いつけ、ジャンプした勢いのサンティは、ジョカルでなく碇に突進した。
ドスッ。
嫌な音に、モスが思わず顔を背けた。
オリバーは、額の汗をぬぐい、モスに強すぎるほど(賞賛の意味で)肩を叩かれ、ジョカルのほうを覗いた。
「船医を、すぐによこしてくれ」
と、ジョカルは、オリバーの予想通りのことを言った。
「まだ息がある。テント社の証人だ。それに、こんな中毒でなければ……」
モスが承知して走って行く。オリバーはサンティの側にしゃがんだジョカルの近くまで降りていった。
「気づいてたんだね、薬物中毒のこと」
「うん、でもな」ジョカルはやれるだけの処置を終えて、寂しそうに言った。「モンスターじゃない、普通の人間と、正面から勝負したんだ。だから、尊厳だけは守ってやりたかったし」
ちょっと甘いよ、と、オリバーは思った。優しいのも、公正なのも結構だけれど、それでどれだけこっちがやきもきさせられることか。
しかし、船医が駆けつけ、手際よく処置を始めるのを見て、ジョカルは真面目に付け加えた。
「それに、もし彼を救えれば、この点でテント社に勝るということでもある」
オリバーは微笑し、肩をすくめた。
「全くその通りです、ええかっこしいの総司令官殿」
船医は、心拍が戻ったのだとかなんとか、もごもご説明しはじめた。オリバーはその場を出ようとし、ちらっと船医の時計が見えたので、はっとした。銀色の竜が文句を言ってから、ここで事件に出くわしてから……。
《この路地に来い、いいな!》
残り、あと5分。
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