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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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雪になりそうな曇り空だった。夕方近くなっていたので、あたりはもう薄暗い。北側の平原からは、狼の遠吠えが聞こえてきた。
馬車は荒地を突っ切り、丘を転げるように下って、かなたに見える林を目指した。

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アジト、というにはお粗末な農機具の倉庫は、兄弟が暮らしていた農地のはずれ、林の奥にある。なぜそんな場所にあるかといえば、林の中でないと、突風や豪雨ですぐ破損してしまうからだった。そのアジトにオリオールのコーディネーターを閉じ込めて、残りの兄弟2人が見張っているという。
オリオールは、ツヴァイクに腕の立つ助手を連れてこなかったことを少し悔やんだ。この兄弟は全然頼りにならないし、林の小屋は当てにならないというのに、もう日没間近である。兄弟は、カレンダーを大分見ていなくて知らなかったというのだが、この日はロアーヌで聖ヒルダの夜と言われるところの、生きている人間にとって一年で最も危険な一夜だった。
「その小屋には、武器になるものがあるんでしょうね」
と、オリオールは言った。あとの3人は風で凍えているのに自分だけサーモマグから湯気の立つコーヒーをすすっている。
「クワとスキならある」と、顔色の悪いクリッツがますます青い顔で答えた。
「窓をふさぐ手立ては?」
兄のワートが思い出したように言った。
「ある。クギと、板切れは壊れた柵からとっておいたんだ」
やはり、頼りない。そこは寝泊り可能だというので、煙突もあるのだろう。そこまでふさぐだけの時間は残っていない。そもそも、壊れた柵の板では、今夜のパワーアップした魔物を防ぐことはまず無理だ。彼らは、死者の世界に行く前に、ちょっとでも、生きているものを道連れにしたがっているのだ。

林に近づくと、そこがスカスカの乾いた疎林だとわかった。
炎を扱うモンスターがもしまかり間違って頭を働かせでもしたら、それだけで蒸し焼きにされるだろう。
オリオールは、林の向こう、ファルスに通じる小高い丘に目をやった。そこは青々した針葉樹林帯になっている。そういえば、伝説の場所もあの近く……。

「小屋に急いで、中にいる連中をすぐに連れ出して、あの森に向かうのよ」
馬車は小屋の前で急停車した。さすがに、馬の息が荒くなっている。その物音で、小屋から一人、うっとおしい長髪の若者がヘロヘロになって躍り出た。
「兄貴たち、やっと着てくれたかっ」
着ている物までボロになって、様子が変だ。
「どうした、ダン?おい、もう魔物が来たのかい」
ワートが驚いて言った。
「中にいるんだよ! でかいハンマー振り回す小娘が! ルークが人質になってる。助けてくれ」
オリオールはケラケラと笑った。そして小屋に向かって言った。
「アーシューラー、そこにいるのはわかっているわよ~」
ごそごそと、窓が開いて金髪の愛嬌のある顔が覗いた。
「ごめん、無断で来ちゃった~。ビクトルさんは無事よ」
ビクトルさんというのがコーディネーターのこと。非常に理知的な外見で、上質のスーツを着こなし、銀縁めがねの奥の眼光は、この世界の経済をいつも数ヶ月先まで見通す。トレードをさせれば一流だし、企業の幹部にも顔が知れている。しかるに、ツヴァイクの林の掘っ立て小屋では、あっさりとごろつきにつかまる人だ。
「じゃああと一人ね」オリオールはワートにきつく言って、というか脅すようにして、全員に馬車に乗るように指示した。小屋にはわざと人がいるように暖炉に火を入れたままにする。ビクトルさんはミゲルと協力して馬に水をあげている。
アーシュラは馬に乗ってきたというのでついてくるよう言った。
「バトルに出かけるの?どこまで?」うれしそうなアーシュラ。
「そっちの針葉樹の森まで。敵は群れでくるでしょう。力を残しながら--遊ぶのよ、わかった?」
「うん♪」
「そっちの森のほうが危険じゃないのかい?」ルークと名乗る落ち着きのない若者が聞いてきた。
「この小屋のほうが持ちこたえるとでも思うなら、無理に来なくていいわ」
「い、いいや、この小屋はもう崩れかかってる」ハンマーで滅多打ちされて、というのをこらえるルーク。
「もう……標的にされてるらしいわね」
オリオールは静かにするように一同に手振りで示し、馬をなだめた。
暗がりの中に、赤く光る眼が、3、4、……ざっと30。ちょっとタチの悪そうなゴブリンの群れだ。いらいらする羽音がその後ろ。そして、頭上に、巨大な爪を持つ翼が羽ばたくのが見えた。
ゆっくりと、馬を方向転換させる。そして全員乗り込んで、オリオールが合図。
「それ、走れっ!」ワートが鞭をふるい、馬車は走り出した。アーシュラも並走し、追いすがる敵を一掃する。オリオールは、蒼龍術をどうにか使うルークに手伝わせ、時間稼ぎに、森の道に風を巻き起こして昆虫族を吹き散らした。そうして自らの白虎術で地面を隆起させ、両脇の大木を次々に倒して敵の頭上に落とす。
そんな中で馬車にはりついたゴブリンがいた。ミゲルは金切り声を上げ、手にしたクワで殴りつけた。しかしそれくらいでは落ちない。頭上にはグリフォンも迫る。クリッツが山刀で応戦、ビクトルさんがナイフで加勢して一匹は撃退した。
「まだまだ来るぞ、森でどこに避難する?」
「森の中央部に樫の木があったはず。周辺に結界があるっていうね」
グシャッ、バキッ!
アーシュラが無言で数体をやっつける脇で、ワートが言った。
「数が多すぎるぜ、かわいそうだが馬を、おとりにしてその隙に逃げよう」
オリオールは、それも筋が通っていると思った。だが、馬も守れない結界が伝説に残るものだろうか。

「馬をエサにして稼げる時間は知れてるわ」オリオールは好戦的な表情になってそれだけ言い、馬車の荷台に立ってガルダウィングを見上げた。敵は降下してきた。オリオールはギリギリまで近づくのを待って、ガルダウィングの懐に飛び込み、その腹部を狙って術を放った。「クラック!」
バチッ!
クリッツとミゲルはその光景に震え上がって互いにしがみついた。
ガルダウィングの体が、地割れのように分断されて地面に落下。オリオールは眉間にしわをよせてその体が復活してこないのを見届けた。
「あんたの言うとおりにする」ワートは感心して言った。「聖者の樫の木がみんなを守ってくださるように!」
しかし古い馬車はもうガタが来ていた。木の根に乗り上げた馬車の車輪が片方はずれ、荷台は大きく横に揺れて、乗っている全員を放り出したのだ。オリオールは素早くバランスを直して降り立ったが、ミゲル、ルーク、ダンと、ビクトルさんは投げ出されてしたたか体を打った。ワートだけはどうにか馬にしがみついて無傷らしい。
「早く、立って!」アーシュラが後ろを警戒しながら叫ぶ。
樫の木らしきものは、その枝振りからぼんやりと前方に見えていた。全員で馬をつれ急いでそこに向かう。すると、結界らしき光も何もない、ただの、ツタのからまる曲がりくねった樫の木があるだけの広場に出た。
「聖者の樫、というには、すすけているね」ミゲルは小声で言った。
「で、どこに入り口が?」ダンが不安そうに言った。
オリオールはこれが結界だと確信を持っていたので、何か、スイッチになるものがあるはずだと主張、全員で周辺をほじくりかえしたが、暗いので何も発見することができない。すでに敵の足音が周辺の落ち葉を踏みしめていた。
そのとき、木につないでいた2頭の馬が急に棹立ちになりいなないた。
「大丈夫、まだ大丈夫よ」アーシュラがなだめるが、馬たちは手綱を引きちぎってしまった。そうして、一同が見ている前で不思議な行動をとった。樫の木の幹を後ろ足でけりはじめたのだ。最初はただの木の幹を蹴る音だった。だが、間もなくそれはコーン、コーンという、金属的な響きにかわっていき、そうして、馬が蹴るのを止め、一同が目を見張ったことには、--樫の木がツタから皮がめくれるように崩れ落ち、そこに光り輝く黄金の巨木が姿を現したのだった。
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