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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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魔物がうごめく夜の森で、避難所を見つけたはずのオリオールとご一行様、の続きです。

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オリオールが大木の後ろに回りこむと、あとの者も急いで続いた。黄金の大木は表面が滑らかで、見事に光り輝いてはいたが、魔物をやりすごすには隠れ場所が必要だ。後ろ側には奇妙なほど大きな洞が空いており、一行は迷わずそこに飛び込んだ。スペースが十分で、馬たちも一緒である。
ミゲルが、上のほうも行ける、と、ぼそぼそ言いながらよじ登った。
「まだ空間があるの?」と、アーシュラ。
「先のほうはちょっと狭いけど、オレ、目もいいしさ、ここで見張る」
「感心なことですね」と、ビクトルさんが言った。この人は、この兄弟に人質にされかけたことを忘れているらしい。また、兄弟も、オリオール暗殺計画のことは、もうどうでもいいらしい。
「し、奴らが来る」と、ワートが言った。残念ながら、そのワートの声が一番響いた。
オリオールはミゲルのすぐ下あたりに登り、森を見下ろした。ここなら魔物が来ても見下ろすポジションで、下手に戦う必要もない。座る場所を確保してから、アーシュラに合図して側まで登ってこさせた。この怪力少女はハンマーを持ったまま寝そうである。このまま朝を待てば、まあ無事にツヴァイクに戻れるだろう。こんなところで予定外の足止めになるのは時間の無駄だが、と、彼女は小さく舌打ちした。
ダンがうっとおしい髪の間から、心細そうにオリオールを見上げた。
「何?」冷たく聞いてやる。
「そっちで声がする。魔物を誰かやっつけているのかね」
「それならそれで、ほっとけばいいわ」
そう応じた直後に悲鳴が上がったが、すぐに、風で木々がざわめく音にかき消された。オリオールは聞き違いではないか、、注意して耳を傾けていた。そして、今度はもっとはっきりと叫ぶ声がした。
「助けてくれ! 誰か!!」
若い男の声としかわからなかったが、複数いる。オリオールは洞から身を乗り出し、暗がりに眼を凝らした。たちかに人影が見えた。
上でミゲルが言った。「大変だ、あれは、騎士だ。魔物に取り囲まれてる」
クリッツの顔はますます青ざめ、ダンは洞の奥にちぢこまった。
オリオールはアーシュラが爆睡しているのをちらと見て、自分のブランケットをかけてやってから、すいっと木から滑り降りた。
「ど、どうするつもりです!」ビクトルさんが飛び出してきてオリオールの腕をつかんだ。
「ビクトルさん、あなたは戻ってて」
ビクトルさんは腕を放し、彼女を見送って独り言を言った。
「……戻るわけないじゃないですか。私ひとりじゃ心もとないけれど、あの若者たちが本気になれば、なんとか役にたちましょう。そして、私には交渉術があるってもんです」

オリオールは自分でもどうかと思いながら、声のほうへ向かって走った。いつもなら、もっと合理的に、冷酷にさえ考えることができる。このあたりを少数でうろついている騎士というのは、十中八九ツヴァイクの、クーデター派の騎士であって、おそらくは、真相をさぐるオリオールを抹殺すべく、ここまで追跡していたのである。そんな刺客を魔物が襲っているならば、何も助けてやることはないではないか。
けれども、再度悲鳴があがって、彼女は一層現場へと急いだ。このときに後ろから、あの兄弟が、ビクトルさんとともにくっついてくるのが見えたので、戻れと合図してみるが、それでもついてくる。よく見るとアーシュラが後ろから追い立ているのだった。
こうなりゃあとは成り行き任せ! オリオールは茂みに隠れて様子を伺い、あとの連中が追いつくと、てきぱきと作戦を伝えた(ついでに栄光の杖も振っておいた)。どういうわけか、今はやる気になった兄弟は、農機具の武器を手にうんうんとうなずく。
「あの、変なマッシーンはどうなの? ハンマーでやろうか」アーシュラが指差した先には、泥色の騎士が変な一人用戦車に乗っている。それは、実はオリバーが遭遇した、哀れなブローの玩具、サー・ブローの変化した姿だった。勿論オリオールはそのことはまだ知らされていない。そして、今や魔物の一種と化したサー・ブローは、子供の作った泥人形ではなくて、異様なパワーを持った殺人戦車だった。
騎士はすでに4人が倒されるか、殺されるかしていた。戦っているのは残り2人。予想通り、紋章からしてツヴァイクの者だ。
「あの2人を援護!」ワートはダンとルークに向かって叫び、突撃した。ダンはその声の大きさにぶるっと震えたが、クワを振りかざしてもたもたとついていった。
「雑魚を一層!」ミゲルはビクトルさんと息もピッタリのタイミングで飛び出した。
驚いたことに、やる気になった兄弟は案外と強かった。たちまち魔物はなぎ倒され、もっと知能の高い連中は、警戒しつつ撤収しようとしている。

アーシュラとオリオールは、一人の騎士をいたぶっていたサー・ブローの前に、ゆっくりと立ちはだかった。
「あんたたち、誰だ?」騎士はヘルメットがズレた情けない状態のまま尋ねた。
「あんたたちが狙っていた相手ですけれど、何か?」オリオールはなかば背を向けたまま言い放った。
「えっ」
「なあ、寝ているままだと、食われるぜ、多分」と、クリッツが横から手を差し出した。騎士は、この顔色のさえない男は、魔物のほうか人間のほうか、一瞬判断に迷ってしまった。

サー・ブローは戦車を変形させ、車輪に炎をまとっている。ヘルメットの中の顔は見えないが、目の辺りからは黄色の光がもれている。握っている剣はかなり重そうなツヴァイハンダーだが、血糊のせいか、何か邪悪な独特の剣に見える。
「彼」が、もとから生物でないことは明らかだった。それも、普通のモノだったのだろう、とオリオールは思った。
モノまでもこの夜に動くようになったなんて。よほど、酷い壊され方でもして、人を恨んでここへ来たのかしら。
考えながら、術を詠唱する。ハンマー娘にベルセルクをかけておくのだ。
「うりゃああっ」
アーシュラのハンマーは戦車を直撃した。戦車はがくんと揺れ、右の車輪は下半分が砕け散った。
よし! オリオールは詠唱していた術を放つ。「クラック!」
左の車輪が、地割れしたその間にはまり込んだ。これで動きは止まった、とどめをさせば終わりだ。
と、思ったのは甘かった。おおいに甘かった。
車輪が砕かれたまま、戦車はにょっこりと地面から這い出し、そして元通りに動き始めた戦車の上で、邪悪な騎士のマシンは剣を振り回し、ミゲルの射た矢を手でつかんでひねり潰した――まるで本物の騎士が、敵に力を見せ付けるときするように。

全員が、さっき助けた騎士も一緒に総攻撃をかける。が、サー・ブローは結局、びくともしなかった。サー・ブローのする攻撃は、威力はあるけれども命中率が高くない。だからかわせばダメージは喰らわないが、こちらの攻撃も効かないのではきりがなく、最後はさっきの騎士のように追い詰められる。
これを見てさすがに兄弟もさっきまでの勢いが冷め、急に恐くなった。
オリオールはかれらを後ろにかばい、アーシュラとともに次の攻撃に備えた。オリオールの武器は、栄光の杖と、護身用のダガーだけである。手持ちの力は小さい、その小さい威力を数倍にするには? 
オリオールは得意なほうの計算に切り替えた。小さい元手で、未知の投資をしつつ、数倍の利益を出すには? そしてそのリスクは?

「アーシュラ!」オリオールは小声で呼びかけた。指のサインでハンマー娘には通じる。
「オーケイ、不本意だけどそれ、狙う」と、アーシュラは言い、ハンマーを後ろ手に構えた。





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