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*平和版次世代ロアーヌではピドナのアルウェン姫をお迎えしています。でも書くのがサリュだからギャクです。本家アルウェン@ロアーヌ設定についてはLilac Gardenを御覧下さい*
夏が近づき、雷雨の日も多く、アルウェンは憂鬱だった。そんな年若い姫を心配して、カタリナ妃は彼女に、なにかして欲しいことはないかと尋ねた。アルウェンは遠慮がちに十分に楽しく過ごしておりますと答えたが、そのとき風に乗って東方の楽の音が聞こえたように思った。
「あ、そうだわ」アルウェンは目を輝かせた。「東方の習慣で夏に願い事をするという素敵なお話を聞きました」
カタリナはアルウェンから詳しくその習慣について聞き、しばらく思案していた。アルウェンは難しい注文をしてしまったのだろうかと彼女を盗み見る。だがカタリナは頭上に電球がともったような顔になり、必ず当日にアルウェンがお願いをできるように手配すると約束した。
アルウェンは嬉しくなって、1人で庭園を歩き、園丁に話しかけてかくかくしかじかの植物はロアーヌにありますかと尋ねた。園丁はそれは聞いたことはあるが、ロアーヌの気候では育つのが遅いから貧弱にしかならないと答えた。
やはり駄目かも知れない、とアルウェンはがっかりした。
カタリナ妃が思案したのもこの植物=竹が手に入らないことを知っていたからであろう。
ではカタリナ妃の頭上にともった電球は一体何なのだろうか。
アルウェンはちょっぴり嫌な予感がしてきた。
数日後の夕刻、アルウェンは呼ばれて王宮のはずれにある広場へ行ってみた。そこにはノール男爵がにこにこして座っており、――頭上にはミリオンバンブーが伸び放題になっていた。しかもよく見るとミリオンバンブーの根元付近には、ロアーヌ道具屋のシールがくっついたままである。近所で買ってきて植えた、ということか。
たじろぐアルウェンのところへロアーヌ王夫妻が近づいてきた。
「さあ、願い事を書く紙もございます、何でもお書きになってね」とカタリナ。
見ると、すでにぶらさがっている短冊には、
「もっともっと美しい絵を書けますように。 ヴィクトル」とか、
「本を食べる害虫が地上からいなくなりますように。 アンゼリカ」とか、
「腕相撲大会の開催日が増えますように。 トゥルカス」とか書かれている。
なぜにトゥルカスが!?とアルウェンは目を見開いたが、やはり目の前の光景に意識は取られて、何か言わねばならないと焦った。だが。
「これが東方の習慣か。不思議だが平和な光景だな」と、ロアーヌ王。
「ええ、しかも恋人たちをさえぎる牛乳の川をサメが泳いで渡すという伝説があるそうですわ」
ちっ、違う……。
夜空に牛乳が流れているのは西方だけである。東方だとまっとうな星の川なのだ。渡し守も鳥のカササギって言ったのにサしか合ってないし。サメじゃあ危険だし!
アルウェンはつっこみかけたがタイミングを失ってしまった。
「春のお祭りを思い出しますね、あのときも私が真中に立ってみんなで踊ったのでした」と、ユリアン・ノール男爵が嬉しそうに言う。頭に何か植えるのははじめてじゃないらしい口ぶりだ。
「ではあの東方の楽の名手、ウンドーメ殿に音楽を頼もうか」
と、ミカエルも微笑んで言った。さっと家臣が奥へと下がる。それで、名手が来るまでは自分が、とユリアンが器用にハーモニカを吹いた。頭上のミリオンバンブーがゆさゆさと揺れる。
アルウェンは、端正なフォームで踊り始めるロアーヌ王夫妻を見ながら弁解の言葉を探していた。
――ごめんなさい、ウンドーメ様。えっと、これは――これはちょっとしたジョークなんです、悪気はないんです、ええ。だから……ぶたないでください。
(byサリュ@脱兎)
夏が近づき、雷雨の日も多く、アルウェンは憂鬱だった。そんな年若い姫を心配して、カタリナ妃は彼女に、なにかして欲しいことはないかと尋ねた。アルウェンは遠慮がちに十分に楽しく過ごしておりますと答えたが、そのとき風に乗って東方の楽の音が聞こえたように思った。
「あ、そうだわ」アルウェンは目を輝かせた。「東方の習慣で夏に願い事をするという素敵なお話を聞きました」
カタリナはアルウェンから詳しくその習慣について聞き、しばらく思案していた。アルウェンは難しい注文をしてしまったのだろうかと彼女を盗み見る。だがカタリナは頭上に電球がともったような顔になり、必ず当日にアルウェンがお願いをできるように手配すると約束した。
アルウェンは嬉しくなって、1人で庭園を歩き、園丁に話しかけてかくかくしかじかの植物はロアーヌにありますかと尋ねた。園丁はそれは聞いたことはあるが、ロアーヌの気候では育つのが遅いから貧弱にしかならないと答えた。
やはり駄目かも知れない、とアルウェンはがっかりした。
カタリナ妃が思案したのもこの植物=竹が手に入らないことを知っていたからであろう。
ではカタリナ妃の頭上にともった電球は一体何なのだろうか。
アルウェンはちょっぴり嫌な予感がしてきた。
数日後の夕刻、アルウェンは呼ばれて王宮のはずれにある広場へ行ってみた。そこにはノール男爵がにこにこして座っており、――頭上にはミリオンバンブーが伸び放題になっていた。しかもよく見るとミリオンバンブーの根元付近には、ロアーヌ道具屋のシールがくっついたままである。近所で買ってきて植えた、ということか。
たじろぐアルウェンのところへロアーヌ王夫妻が近づいてきた。
「さあ、願い事を書く紙もございます、何でもお書きになってね」とカタリナ。
見ると、すでにぶらさがっている短冊には、
「もっともっと美しい絵を書けますように。 ヴィクトル」とか、
「本を食べる害虫が地上からいなくなりますように。 アンゼリカ」とか、
「腕相撲大会の開催日が増えますように。 トゥルカス」とか書かれている。
なぜにトゥルカスが!?とアルウェンは目を見開いたが、やはり目の前の光景に意識は取られて、何か言わねばならないと焦った。だが。
「これが東方の習慣か。不思議だが平和な光景だな」と、ロアーヌ王。
「ええ、しかも恋人たちをさえぎる牛乳の川をサメが泳いで渡すという伝説があるそうですわ」
ちっ、違う……。
夜空に牛乳が流れているのは西方だけである。東方だとまっとうな星の川なのだ。渡し守も鳥のカササギって言ったのにサしか合ってないし。サメじゃあ危険だし!
アルウェンはつっこみかけたがタイミングを失ってしまった。
「春のお祭りを思い出しますね、あのときも私が真中に立ってみんなで踊ったのでした」と、ユリアン・ノール男爵が嬉しそうに言う。頭に何か植えるのははじめてじゃないらしい口ぶりだ。
「ではあの東方の楽の名手、ウンドーメ殿に音楽を頼もうか」
と、ミカエルも微笑んで言った。さっと家臣が奥へと下がる。それで、名手が来るまでは自分が、とユリアンが器用にハーモニカを吹いた。頭上のミリオンバンブーがゆさゆさと揺れる。
アルウェンは、端正なフォームで踊り始めるロアーヌ王夫妻を見ながら弁解の言葉を探していた。
――ごめんなさい、ウンドーメ様。えっと、これは――これはちょっとしたジョークなんです、悪気はないんです、ええ。だから……ぶたないでください。
(byサリュ@脱兎)
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Comment
トリオール海を越えた短冊
回収したのはバーニング・ブライヤー号です。
「旧市街の温泉が繁盛しますように。 ソロンギル」
「トゥルカスが農園を荒らしませんように。 ルーシエン」
肉球が押された短冊。(ルーシエン様が健やかに過ごされますように、と書いているつもりらしい。)
「収穫祭のレースで、ティリオンが4連覇できますように。 アリエン」
「アリエンより大きくなりますように。 オリバー」
「旧市街の温泉が繁盛しますように。 ソロンギル」
「トゥルカスが農園を荒らしませんように。 ルーシエン」
肉球が押された短冊。(ルーシエン様が健やかに過ごされますように、と書いているつもりらしい。)
「収穫祭のレースで、ティリオンが4連覇できますように。 アリエン」
「アリエンより大きくなりますように。 オリバー」
旅芸人登城
王宮へやって来たウンドーメは、頭にミリオンバンブーを挿してハーモニカを吹くユリアンを見て、固まった。
「あの、ウンドーメ様……」
弁解しようとしたアルウェンだが、彼女は
「シノン男爵、竹は花が咲くと枯れるそうだから、お気をつけて。毛根まで枯れて、つるッ禿になったら大変」
こうユリアンに言ったので、アルウェンはまたも絶句した。
「ジズーみたいになるかな?」
「厳しいですわね」
「ウンドーメ殿は正直だな」
妃と優雅に踊るロアーヌ王が笑うと、ユリアンも照れ笑いを浮かべてハーモニカを吹き始めた。
父様、母様、アルウェンはピドナが懐かしくなりました
彼女が短冊に「ピドナに帰りたい」と書きたくなったのは、言うまでもない。
「あの、ウンドーメ様……」
弁解しようとしたアルウェンだが、彼女は
「シノン男爵、竹は花が咲くと枯れるそうだから、お気をつけて。毛根まで枯れて、つるッ禿になったら大変」
こうユリアンに言ったので、アルウェンはまたも絶句した。
「ジズーみたいになるかな?」
「厳しいですわね」
「ウンドーメ殿は正直だな」
妃と優雅に踊るロアーヌ王が笑うと、ユリアンも照れ笑いを浮かべてハーモニカを吹き始めた。
父様、母様、アルウェンはピドナが懐かしくなりました
彼女が短冊に「ピドナに帰りたい」と書きたくなったのは、言うまでもない。