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ロマサガ3の二次創作を書いているひとのブログです。
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アリエンはテントでベッドにもぐったが、確かにぐったり疲れていると感じていた。ここはゲート前なのに、今敵が現れたらすばやく動けるだろうか、といつになく心配になった。

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もっとも気になるのは、実はダークネスのことだった。
見た目はフィデリスにあまりにも似ている。が、完全に別人格。
エラノールの叱責でヘビのような姿になったが、あれが本体だとはアリエンにはなぜか信じられない。「ダークネス」という名の通りに、彼女は、それこそ光り輝くエラノールの、影のような生き方が宿命なのだろうか?

サクサク…
落ち葉を踏みしめる音がする。大抵の葉が落ちて、森の中は薄明るかった。
アリエンは、前方から来る金髪のダークネスをじっと見ている。
向こうもアリエンだと承知している。今は、弓を構えようとはしないが。
そしてダークネスは、盛り上がった木の根に腰を下ろし、独り言のように話し始めた。
「あんたの予想通り、私は、エラノールとグリンディルにはない、影から生まれたの。グリンディルは私が悪さを繰り返しても、許してくれたわ、アヴァンレッドがケガをして、つききりでないといけない夜に、わたしが見ていたいといったら、任せてくれた。でも私は居眠りをしてしまった。
エラノールは、私のことを信用しすぎるといってグリンディルに文句を言っていた。それもこう言ったの、『この子にいつまでもかかわると、いつかあなたが死ぬことになる』
人間にだって、悪いところはあるのに、私が何かヘマをすると、エラノールは許さなかったわ。でも、それも私のためだとエラノールは考えてた、悪いことばかりしていれば星の民だって闇に落ちるの。それは知っていた。だけどね、私は、あのままじゃ、2人とも負け戦のために西に戻らないこと、わかってたのよ。でもアヴァンレッドが治らなければ、グリンディルは治療したがるし、エラノールも戦うの諦めると思った。
だから、だからね、……彼女の愛馬のアヴァンレッドを飛べないようにしたの。まさか、ベルヌイで戦うなんて。
エラノールでさえ殺されてしまったのに、グリンディルが一人でこっちの世界にいるなんて、無茶だと知っていたの、だから、テンのアヴァンレッドを、またちょっとケガさせればいいと……まさか死ぬなんて」
アリエンは、黙って聞いていたが、ここで声をかけた。
「その話をなぜ私に聞かせるの?」
エルフは琥珀の瞳を向けてきた。その目は悲しみを通り越して、痛々しい憤りになっていた。
「あんたが、私たちの世界にかかわっているからよ」
アリエンはなんとも言いようがなく、ダークネスのほうへ近づこうとし、そしてビクリとして立ち止まった。
ダークネスも気配を感じて立ち上がる。

茂みから姿を現したのは、黒テンのガウンを来た細身の貴族に見えた。長い黒髪は手入れされカールしていて、ブーツも、剣吊りも上品なものだ。しかし、その顔は青白く骨ばっていて、にやりとしてあけた口の中だけがいやに赤い。そして、アリエンは本能的にこの男が敵だと察知した。
「ごきげんよう、ファルスの義勇軍が負けちまったそうだねえ。ところで、ちょっと人を探しているんだがね、お嬢ちゃん?」
その声はやや高いくらいなのに、人を冷たい閉所に縛り付けるような感じをともなっていた。「天文台あたりにいると聞いているんだ、金髪で、やせていて、年齢の割りに子供じみているが、薬を作らせたら天才だと、そういう娘さんのことさ」
「そんな娘さんに何の用なのかしら?」ダークネスは冷ややかに言った。
相手の男は、そこでダークネスをしげしげと眺めた。冬なのに軽装、エルフが持つというものそっくりの弓を携え、琥珀の瞳はまるでずっと年少の者を見るような目線。
彼は、そこで納得したように軽くうなずいた。
「君は聡明そうだから本当のところを言おう。グリンディルという名の星の民が、人間のフリをしてこのあたりに住んでいることはわが主も承知だ。その星の民を連れてくれば、失った領地のみならず、世界の統治者としての地位も与えるという約束があってねえ」
ダークネスは必死にこらえていたが、足元は震えだした。男はそれを、猫がねずみを見るように眺め、付け加えた。
「私の名はルートヴィッヒ。このあたりも領地にするつもりで遠乗りしていたから懐かしいよ。ま、君に聞いて、伝説の技巧の女神の居場所がわかるわけもなかった。邪魔したね」
ルートヴィッヒはさっときびすを返して森の奥へ去ろうとした。
だが、ダークネスはその後ろ姿を見て、叫んだ。
「バカにするんじゃないわ、私を誰だと思ってるの?」

アリエンは飛び出そうとした。だが体は動かず、声も届かない。それでも、
--この男は人間とは違う、余計なことを言ってはいけない--
そう叫ぶ、ダークネスの心の声が響いた。

「ふうむ?誰だっけな?」
「グリンディルは、姉妹も同然なのよ。彼女の、この世界での目的は虹、だから、虹が見えるアルタイルの丘にいつも行くのよ!」
ルートヴィッヒは、ちらっと帽子をあげて、ダークネスに挨拶した。その背後に、黒い皮製の袋が見える。中から覗いているのは、禍々しい艶を持った石弓だ。

「グリンディルのいるほうへ行ったかしら? でも、危ないところを助ければ、グリンディルは私を見直すに決まってる」--
ダークネスが、先回りのつもりで茂みへ踏み込みながら、そんなふうに言うのが聞こえた。
「分からないの?あの男は、死んだはずのあの男はアビスからやってきた。主というのはネメシスのことだわ!!」
アリエンは槍を握ろうと手を伸ばして探ったが、空を握るだけだった。
こんなとき、なぜ前に現れたようにエラノールは出てこないのだろう?
アリエンが行こうとすると、森はたちまち色を失い、灰色の、遮断された世界に戻った。アリエンは耐え切れずに、泣き声をあげた。
「ダークネス!」


「アリエン?」
目を開けると、心配そうにヤン・エイが覗き込んでいた。後ろにトゥルカスも立っている。
アリエンはまだテントのベッドの上だった。疲れから熱を出してうなされていたと聞かされ、すべて夢だったと思った。だが、あまりにも生々しい夢だ。
アリエンは、大丈夫だから、とヤンの差し出すタオルを断りながら、何が起きているか考えようとした。しかし、まるでわからない。
それを感づいたのは年子の兄だった。
「ちょっとの間、ピドナの母上のところに行くといい。その謎がお前一人で解決できないと思うならな」
アリエンは、うん、と言おうとしてはっとした。
謎が急に解けたのだ。この夢を見せたのは、エラノール。そう、彼女が告げている気がする。そして、これは、予知夢だ。ルートヴィッヒは、ファルスの義勇軍が負けたそうだとも言っていたではないか。では、そんな運命は変えればいいのではないか。
アリエンは槍のありかをたしかめ、ぎゅっと握ってから兄を見上げた。
「ピドナに行くことはないわ。だって、私はここを守らなきゃ」









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