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ご無沙汰しています。暗い話題が多い今日この頃ですが、春休み期間でもありますし、久々にご帰還の方もいらっしゃいますし、気分をかえて、どたばたコメディを書き下ろしましたので掲載します。
ロアーヌにしては昔っぽい話。
モンスター退治にマスカレイドを使ってしまったので、カタリナはとぎに出すことにしました。といってもロアーヌの宝、誰かにいいつけてホイホイと出してしまうわけにもいきません。
カタリナは自ら持参することにしました。
そこへ、ミカエルが通りかかりました。
「有給届けが出ていたのは、そういうことか。護衛をつけていかないのか」
「おおげさにすればかえって目立つと思いまして」
控えめに答えるカタリナですが、腕に自信があるのに護衛なんてちゃんちゃらおかしい、といわんばかりの目つきです。
そこへ、かごに果物を一杯入れたモニカが出てきました。
「モニカ、その果物は何事だ」
「シノンの出張村祭りで、ピドナでお芝居をやることになりましたの。演目『あかずきん』で、狼はトーマスが、おばあさん役はノーラさんが快諾してくださいました。でも私、こないだ主役でスズメをやったもので、いつも目立つと一部女子のねたみを買いかねません。そうだ、ちょうどいい、カタリナ!」
「な、何でしょうか」モニカの目がぎらっと光ったのでさすがにたじろぐカタリナ。ミカエルは、さすがにわが妹はたのもしいと思っています。
「あなたが赤頭巾をやればいいわ」
カタリナは、問答無用で真っ赤なフードつき衣装を着せられ、リハーサルと称して、ロアーヌから、ミュルス、ピドナまでもでかけることになりました。
「この果物かごにマスカレイドをしのばせるのよ。敵もまさかと思うわ」
しぶしぶ出発したカタリナですが、衣装のせいで本人だとは誰も気がつきません。けれども、こんな子供っぽい衣装の割には背は高いし、歩幅は広いし、ちらっとフードからのぞく眼光の鋭いこと。近づこうとしたロアーヌ狼たちは、声をかける勇気もありません。唯一ミカエルだけは、長い髪もいいが、こういうファッションもなかなかいい、と自分の覚書に書き込んでおりました。
さて、全く寄り道をせずピドナへはいったカタリナ。船をおりるともう夕暮れ時です。
「道に迷ったようだね、赤頭巾ちゃん?」
棒読みのような声が後ろからかかりました。カタリナは無視していましたが、声はしつこく花畑がどうのと繰り返します。
振り返ると、それは二本足で立っている地狼役のジャッカル氏です。トーマスは仕事で忙しく、今日のリハーサルのみメールで彼にお願いしていました。
しかるに、紹介されてない人物は知らないで通すのがロアーヌ貴族の流儀。
「どうして狼がさんごのピアスなんてしてるのかしら?」
カタリナは、いかにも警戒した顔つきで、赤いフードつきマントをかろやかに脱ぎ捨てました。
「それはね」狼は応じようとしましたがセリフが違うので、アレ?と首を傾げました。
「そのうえ、うっとおしく髪だのひげだの長くしてるのはどうしてかしら?」
そういうとカタリナはすさまじい気迫とともに剣を抜き放ちました。同時に宙に舞う果物の山。「モニカさまの差し入れ」に、旧市街の子供たちがわーっと喜んで集まってきました。
「やっちまうのね。じゃあその間に研いでおくからね♪」宝剣をゆうゆうとキャッチしたノーラは、景気よく言いました。
困ったのは狼のジャッカル氏です。
「えっと、そこセリフが違うと思うんですが、カタリナ様? 長いのは耳ですよ、耳。・・・・・・ま、細かいとこはいいか」そこまで小声でいって、
「うおー、くっちまうぞ」と、狼はとびかかるフリをしました。
「おのれ、誰に向かってそんな口を!」
「だから、それセリフが違いますって。《なぜそんなに口が大きいの?》です。ええ、申し遅れましたが、私、急遽ダブルキャストでこの役をいただきました神王教団のピドナ支部ちょ――ひえーっ!」
ジャッカル氏がどつきまわされる間、ミューズさまは刺繍の手を休めずにシャールに言いました。
「あなたは猟師の役でしょう、シャール?」
「全く難しい役柄です。あの2人を助けるというアクションを抜きにして、この芝居における猟師の役割とは一体何か?」
「簡単だわ。あの2人と子供たちをお茶によべばよろしいのよ。トーマスも戻ればもちろん彼もね。それこそ大団円というものだわ」
いい香りのするハーブティの湯気の向こうで、ミューズさまは平和そのものな微笑みを浮かべました。
教訓:もしお尋ね者が変装するつもりなら、ごく平凡なスタイルが無難というものです。
ロアーヌにしては昔っぽい話。
モンスター退治にマスカレイドを使ってしまったので、カタリナはとぎに出すことにしました。といってもロアーヌの宝、誰かにいいつけてホイホイと出してしまうわけにもいきません。
カタリナは自ら持参することにしました。
そこへ、ミカエルが通りかかりました。
「有給届けが出ていたのは、そういうことか。護衛をつけていかないのか」
「おおげさにすればかえって目立つと思いまして」
控えめに答えるカタリナですが、腕に自信があるのに護衛なんてちゃんちゃらおかしい、といわんばかりの目つきです。
そこへ、かごに果物を一杯入れたモニカが出てきました。
「モニカ、その果物は何事だ」
「シノンの出張村祭りで、ピドナでお芝居をやることになりましたの。演目『あかずきん』で、狼はトーマスが、おばあさん役はノーラさんが快諾してくださいました。でも私、こないだ主役でスズメをやったもので、いつも目立つと一部女子のねたみを買いかねません。そうだ、ちょうどいい、カタリナ!」
「な、何でしょうか」モニカの目がぎらっと光ったのでさすがにたじろぐカタリナ。ミカエルは、さすがにわが妹はたのもしいと思っています。
「あなたが赤頭巾をやればいいわ」
カタリナは、問答無用で真っ赤なフードつき衣装を着せられ、リハーサルと称して、ロアーヌから、ミュルス、ピドナまでもでかけることになりました。
「この果物かごにマスカレイドをしのばせるのよ。敵もまさかと思うわ」
しぶしぶ出発したカタリナですが、衣装のせいで本人だとは誰も気がつきません。けれども、こんな子供っぽい衣装の割には背は高いし、歩幅は広いし、ちらっとフードからのぞく眼光の鋭いこと。近づこうとしたロアーヌ狼たちは、声をかける勇気もありません。唯一ミカエルだけは、長い髪もいいが、こういうファッションもなかなかいい、と自分の覚書に書き込んでおりました。
さて、全く寄り道をせずピドナへはいったカタリナ。船をおりるともう夕暮れ時です。
「道に迷ったようだね、赤頭巾ちゃん?」
棒読みのような声が後ろからかかりました。カタリナは無視していましたが、声はしつこく花畑がどうのと繰り返します。
振り返ると、それは二本足で立っている地狼役のジャッカル氏です。トーマスは仕事で忙しく、今日のリハーサルのみメールで彼にお願いしていました。
しかるに、紹介されてない人物は知らないで通すのがロアーヌ貴族の流儀。
「どうして狼がさんごのピアスなんてしてるのかしら?」
カタリナは、いかにも警戒した顔つきで、赤いフードつきマントをかろやかに脱ぎ捨てました。
「それはね」狼は応じようとしましたがセリフが違うので、アレ?と首を傾げました。
「そのうえ、うっとおしく髪だのひげだの長くしてるのはどうしてかしら?」
そういうとカタリナはすさまじい気迫とともに剣を抜き放ちました。同時に宙に舞う果物の山。「モニカさまの差し入れ」に、旧市街の子供たちがわーっと喜んで集まってきました。
「やっちまうのね。じゃあその間に研いでおくからね♪」宝剣をゆうゆうとキャッチしたノーラは、景気よく言いました。
困ったのは狼のジャッカル氏です。
「えっと、そこセリフが違うと思うんですが、カタリナ様? 長いのは耳ですよ、耳。・・・・・・ま、細かいとこはいいか」そこまで小声でいって、
「うおー、くっちまうぞ」と、狼はとびかかるフリをしました。
「おのれ、誰に向かってそんな口を!」
「だから、それセリフが違いますって。《なぜそんなに口が大きいの?》です。ええ、申し遅れましたが、私、急遽ダブルキャストでこの役をいただきました神王教団のピドナ支部ちょ――ひえーっ!」
ジャッカル氏がどつきまわされる間、ミューズさまは刺繍の手を休めずにシャールに言いました。
「あなたは猟師の役でしょう、シャール?」
「全く難しい役柄です。あの2人を助けるというアクションを抜きにして、この芝居における猟師の役割とは一体何か?」
「簡単だわ。あの2人と子供たちをお茶によべばよろしいのよ。トーマスも戻ればもちろん彼もね。それこそ大団円というものだわ」
いい香りのするハーブティの湯気の向こうで、ミューズさまは平和そのものな微笑みを浮かべました。
教訓:もしお尋ね者が変装するつもりなら、ごく平凡なスタイルが無難というものです。
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